しごと
  • 公開日: 2022/6/21

看護師の働き方改革を解説。ワークライフバランス・労働環境の展望

2019年4月に施行された「働き方改革関連法」。法律の施行に伴い、看護師も例外なく職場で様々な取り組みが行われている。施行から2年以上が経過した今、働き方に関してアンケートを実施。看護師のワークライフバランスの理想と現実から労働環境の現状を解説します。

看護師の理想のワークライフバランスを叶えるために必要なこと

ワークライフバランス(仕事と生活の調和)とは、個人の仕事と仕事以外のさまざまな活動のバランスがとれた状態のことを指します。

仕事は日々生活するために必要なもので、それに対する「やりがい」や「生きがい」は充実した人生を送るための糧です。一方、家族と過ごす、趣味などに費やすといったプライベートの時間も、欠かすことができないものです。ワークライフバランスとは、仕事とプライベートの2つを調和させて双方を充実させる働き方と生き方のことを意味します。

特に看護師の仕事は、夜勤や休日出勤など不規則勤務であることが多いため、仕事とプライベートにアンバランスをきたすことが多く、ワークライフバランスが崩れやすい傾向があります。実際に日本の看護職の年齢階層別の就業率をみると、20代後半から30代にかけて急激に低下しています。さらに看護職は一度辞めると復職が少ない傾向にあります。

昼夜を問わずに医療サービスを提供しなくてはならない医療現場において、結婚・出産などのライフイベントの影響を受けやすい女性が大半を占める看護職が働き続けるには、多くの困難が伴います。

看護師の理想の働き方を考えるために、働き方に関する様々な制度や仕組みを理解したうえで、看護師それぞれが働き方の意識や職場環境をよりよくするためのアクションしていくことが重要となります。

看護師のワークライフバランスの理想と現実

看護師が現実的に感じるワークライフバランスの割合

Q:現在のワークライフバランス(仕事と生活の調和)の割合はどのくらいだと考えますか?

1位/仕事7:プライベート3(25.07%)

2位/仕事5:プライベート5(19.14%)

3位/仕事6:プライベート4(15.28%)

4位/仕事8:プライベート2(12.61%)

5位/仕事4:プライベート6(8.75%)

ナース専科調べ(2021年9月29日/有効回答数:674)

現在のワークライフバランスの割合についての質問の回答を大きく三つに分けると「仕事の割合が多い」(仕事の割合6~9割)と答えた人は、約60%に達していました。「仕事とプライベートが半々」は約19%、そして、「プライベートの方が多い」(プライベートの割合6~9割)という人は合計約21%という結果でした。

ワークライフバランスの現状評価は時間数だけでなく、仕事とプライベートの精神的な負担や気持ちの余裕によるところが大きく、この結果から仕事がプライベートを圧迫しているという現状が見えてきます。

看護師の理想とするワークライフバランスの割合

働いている看護師さんは、仕事と生活のバランスがどのくらいの割合が理想と考えているのでしょうか。

Q:理想のワークライフバランス(仕事と生活の調和)の割合はどのくらいだと考えますか?

1位/仕事5:プライベート5(38.87%)

2位/仕事3:プライベート7(22.11%)

3位/仕事4:プライベート6(19.88%)

4位/仕事6:プライベート4(6.38%)

5位/仕事2:プライベート8(6.08%)

ナース専科調べ(2021年9月29日/有効回答数:674)

ナース専科のアンケートでは、理想の割合は、5:5と答えた人が38.9%となっており、仕事もプライベートも平等なバランスを取りたい人が一番多い結果でした。一方で、プライベートの割合を多く答えた人が半数以上に上っています。看護師の仕事は24時間体制でシフト制のことが多く、元々ワークライフバランスが取りにくい職場です。理想のワークライフバランスとしてせめてプライベートの割合を大きくしたいという希望が反映された結果となりました。

看護師のワークライフバランスを推進する

看護師のワークライフバランスの推進に関しては、日本看護協会が2016年から取り組んでおり、特設Webサイトもあります。(看護職のワークライフバランス特設サイト)このサイトでは、独身者も既婚者も、子どもがいるいないにかかわらず、働く側が柔軟な働き方ができる環境整備の側面だけでなく、雇用する側にとっても離職率の低下や人材の定着といった経営戦略として認識する必要があると説明されています。

看護師のワークライフバランスは、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」と無関係ではありません。その成り立ちと環境整備をしっかり理解したうえで、職場環境を整えることが、理想の働き方に近づく一歩になるのではないでしょうか。次のパートでは「働き方改革関連法」の内容についてみていきましょう。

政府が推進する「働き方改革」とは

働き方改革とは国は一億総活躍社会の実現に向けて、「働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革」を総合的に推進するための取り組みです。労働に関連する8つの法律の改正をひとつにまとめた「働き方改革関連法」が2019年4月1日に施行しました。正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」と言います。

働き方改革関連法の3つの柱

1.労働時間の是正

2.正規、非正規間の格差解消

3.多様な柔軟な働き方の実現

施行から2年以上が経過し、一億総活躍社会の実現という言葉はほとんど聞かれなくなりました。しかし、「働き方改革関連法」は今後ますます加速する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や働き方の多様化にともなう「育児や介護との両立など、働く人々のニーズの多様化」などの課題を解決するために、政府が主導して取り組んでいます。働き方改革は、それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

看護師の働き方改革推進の現状を解説

当初は大企業(大病院)に限られていた「働き方改革関連法」ですが、2020年4月からは中小企業(中小の病院・クリニック・施設など)にも適応され、どの職場でも無関係ではいられない状況となりました。特に医療現場で取り組むべき内容と現状について解説します。

看護師の働き方改革の現状分析

働き方改革が施行されたことで看護師の労働環境も変化を余儀なくされています。 特に以下の3つの取り組みが求められています。

1.時間外労働の罰則付き上限規制

2.年次有給休暇、年5日の取得が義務付け

3.労働時間の状況把握の客観的記録

ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:304)

ナース専科で実施した、勤務先の働き方改革への取り組みについてどのように感じているか調査したアンケートでは、「積極的に取り組んでいる」「まあまあ取り組んでいる」を合わせて51%となりました。一方「まったく取り組んでいない」と答えたのは25%を超えています。法律施行から2年以上経過により、徐々に取り組みが現場でも実感されてきていることがわかります。

休暇制度や休暇取得に課題を感じる看護師が多数

Q:働き方のどのようなことが改善されたと感じますか?

1位/有給休暇の推進(53.8%)

2位/長時間労働の改善(53.8%)

3位/業務効率の改善の取り組み(46.84%)

4位/多様な働き方の推進(29.75%)

5位/高齢者雇用の促進(定年引上げ、シニア雇用促進)(14.56%)

ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:158)

働き方改革で変化した看護師の労働環境

時間外労働の内容として、前残業と呼ばれる就業時間前の情報収集の時間だけでなく、制服の更衣の時間も労働時間にカウントされるということが明文化されています。

以前は、勤務時間の線引きが曖昧だったのですが、それが明確に分けられたということは働き方改革の一つの成果と言えるでしょう。

また、年次有給休暇の取得義務はもともと労働者の権利でしたが、特に若い独身の看護師たちは有給休暇の取得が進まない現状がありました。アンケートの結果から見ても 3割の人が「勤務先が働き方の改善に取り組んでいる」と回答していますが、言い換えると7割の人は改善の取り組みを評価していないという現実も突きつけられています。

看護師もテレワークの時代。多様化する働き方

看護師という仕事はその特徴から、テレワークとは無縁の仕事と思われがちです。また、看護師みずからも「自分たちとは関係のないこと」と、思い込んでしまう傾向にもあるようです。

もちろん、看護師という仕事は、医療機関や訪問看護など自ら出向くことが多い仕事ですが、現場の看護師にもテレワークを導入する病院があります。

ある病院では、新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病棟で一か月間勤務した看護師を交代で、在宅型テレワーク5日間と公休2日間の勤務を計画し実施しています。この取り組みは看護師でも工夫次第でテレワークが可能であることが示されると同時に、コロナ禍で心身をすり減らしながらがんばる看護師の現状を理解し、どのようにしたらフォローできるかを考えた素晴らしい取り組みだと賞賛されています。

「働き方改革」が目指すもの

公益社団法人日本看護協会が夜勤等を行っている病院等と看護職員を対象に、2019 年に「病院および有床診療所における看護実態調査」を実施しました。その結果、以下の問題の改善が求められていることが明らかになりました。

  1. 長時間労働の常態化、前残業、持ち帰り業務、勤務時間外の研修等、カウントされない時間外労働と未払い残業問題の常態化
  2. 暴力・ハラスメントにより心身の健康を脅かされる看護職の増加
  3. 多様な働き方や能力・役割・成果 に対する公平な評価・処遇
参考:2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 報告書(日本看護協会)

この結果を踏まえて「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」が2021年3月に発表されました。

5つの要因 「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」(10 項目)
1.夜勤負担 1)勤務間隔は 11 時間以上あける(勤務間インターバルの確保)
2)勤務拘束時間 13 時間以内とする
3)仮眠取得の確保と仮眠環境の整備をする
4)頻繁な昼夜遷移が生じない交代制勤務の編成とする
2.時間外労働 5)夜勤・交代制勤務者においては時間外労働をなくす
6)可視化されていない時間外労働注を把握し、必要な業務は所定労働時間に取り込む
注)業務開始前残業(前残業)や持ち帰り業務、勤務時間外での研修参加等(業務時間外残業)
3.暴力・ハラスメント 7)暴力・ハラスメントに対し、実効性のある組織的対策を推進する
8)上司・同僚・外部からのサポート体制を充実させる
4.仕事のコントロール感 9)仕事のコントロール感を持てるようにする
5.評価と処遇 10)仕事・役割・責任等に見合った評価・処遇(賃金)とする
引用:就業継続が可能な看護職の働き方の提案(日本看護協会)

看護師の就業場所は拡大しているにもかかわらず、少子高齢社会で看護職の増加が見込めないため、看護提供体制を維持するためには雇用する側もされる側も大幅な意識改革が必要な状況です。この内容を現実のものにしていくのは自分たちであるという、各自の自覚も必要です。

看護師の理想のワークライフバランスを実現するためには

最後に、看護師歴28年、副看護師長を8年経験した筆者からは二つお話ししたいと思います。 一つは以前に比べて確実に働く環境は良くなっているということです。

例えば20~30年以上前に子育て世代だった先輩方に話を聞くと、産休はあったけれど育休はなくて産休明けには仕事に復帰したとか、夜勤の免除もなくて夜勤に入らざるを得なかったなどという話を聞いた事があります。

もう一つは、「何もしないこと」は同意したと見なされるということに気をつけよう、です。

私たち労働者は不満だらけの現状を少しでも良くするために活動をする必要があります。

「働き方改革関連法」では法律の後ろ盾があり、日本看護協会が文章で理想の形を示してくれているということは、管理職との話し合いに使うことができるということです。

アンケートの職場環境の不満に関する回答を見ても「サービス残業がある」「パワハラがある」「有休が取得し辛く、毎年使いきれていない」などがあり、明らかな法令違反も散見され、本当に辛い現状が伝わってきます。あまりにもひどい労働環境で、何を言っても無駄という職場であるなら、転職をするというのも一つの選択肢になると思います。

陰で文句を言っても、なんだかんだ言っても働き続けているということは、その状況に消極的ではあっても同意をしていることと同じとみなされます。

様々な理由があって、今の職場で働き続けなければならないという方であれば、その状況を少しでも良くするために行動を起こすことが必要です。

もしあまりにも勤務年数が少なくて発言権がないと思うのであれば、発言権を持てるような立場になるための努力をするというのも一つの方法ですね。

上層部の管理職の先輩方は、もしかして自分達の若い頃に比べれば今は大変恵まれていると思っていて、改革の必要性を感じていないのかもしれません。もしそうだとしたら…これからを担う皆さんが改革の必要性を訴えていく必要があります。

看護師の労働環境も政府が推進する「働き方改革」の例外ではなく、少しでも働きやすいように、続けやすいように見直されてきています。今後は雇用する側と雇用される側の双方で環境を整えていくことが必要です。それこそが看護業界の真の変革になるのではないでしょうか。

引用・参考

1)看護職の働き方改革(日本看護協会)

2)2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 報告書(日本看護協会)

3)就業継続が可能な看護職の働き方の提案(日本看護協会)

4)看護職のワークライフバランス特設サイト(日本看護協会)

関連記事